こんにちは、
AI-am(アイアム)です。
よっぴー、まりんが7月に観た映画から、4作をご紹介します。
工作 黒金星と呼ばれた男
1992年、北朝鮮の核開発をめぐって朝鮮半島の緊張状態がたかまるなか、軍人だったパク・ソギョン(ファン・ジョンミン)は北の核開発の実態を探るため、コードネーム黒金星(ブラック・ヴィーナス)という工作員として北朝鮮に潜入する命令を受ける。
事業家に扮したパクは3年にもおよぶ慎重な工作活動の末、北朝鮮の対外交渉を一手に握るリ所長(イ・ソンミン)の信頼を得ることに成功し、北朝鮮の最高国家権力である金正日と会うチャンスをものにする。
しかし1997年、韓国の大統領選挙をめぐる祖国と北朝鮮の裏取引によって、自分が命を賭けた工作活動が無になることを知り、パクは激しく苦悩する。
果たして彼は祖国を裏切るのか、それとも国が彼を切り捨てるのか。また北朝鮮はパクの工作に気づくのかー。
引用:filmmarks
1980年の光州事件を描く『タクシー運転手~約束は海を越えて~』、1987年の民主化を描く『1987、ある闘いの真実』に続く、1997年の大統領選をめぐる韓国スパイ劇。
めちゃくちゃ面白い。冒頭、この映画はフィクションだ、と宣言されてはいるものの、ユン・ジョンビン監督のインタビュー記事では「すべて事実と思っていただいて結構です」との発言もある。
『タクシー運転手~約束は海を越えて~』鑑賞後の記事はこちら↓
[kanren2 postid=”13652″]
スパイもの、政治サスペンス、韓国映画ときて暴力も拷問もアクションもなし。
それゆえに作り上げられる緊迫感、重苦しい圧。信じるものによって結びつく男たち。実話で固めているのに、エンタメ力がすごい。
『文藝』2019年秋季号 の中で、ハン・トヒョンさんが日本と韓国の映画制作のついて少し触れられていました。
いわく、『タクシー運転手』上映後のトークイベントの質疑応答で、日本人の年配男性が「今の日本でこのような映画は作れない」といった旨の発言をした。
それに対してハン・トヒョンさんは、「日本には日本の問題とたたかい方があるのでは」、「(日本の場合)それが映画である必要があるかどうかはわからない」、「韓国は大きな犠牲をはらいながら歴史をつくり、報道や映画における自由も手に入れてきた」などと話したという記述が(これ自体は本題の前振りにすぎませんが)。
これらの映画を観てなお過程を無視し、今ある結果だけを見てあっちはすごい、こっちはだめだ、とそれ以上考えないのはたしかに浅はかだけれど、道のりを軽視する・しないや戦う・戦わない以前に、「それが映画である必要」は、ここにもあってほしい、と思ってしまう。
必要になり得るような前提が、それを求める力が。こんなふうにすばらしい映画を観ると。
『工作 黒金星と呼ばれた男』公式サイト http://kosaku-movie.com/
新聞記者
都新聞記者・吉岡(シム・ウンギョン)のもとに、大学新設計画に関する極秘情報が匿名FAXで届いた。
日本人の父と韓国人の母のもとアメリカで育ち、ある思いを秘めて日本の新聞社で働いている彼女は、真相を究明すべく調査をはじめる。一方、内閣情報調査室官僚・杉原(松坂桃李)は葛藤していた。
「国民に尽くす」という信念とは裏腹に、与えられた任務は現政権に不都合なニュースのコントロール。愛する妻の出産が迫ったある日、彼は、久々に尊敬する昔の上司・神崎と再会するのだが、その数日後、神崎はビルの屋上から身を投げてしまう。
真実に迫ろうともがく若き新聞記者。「闇」の存在に気付き、選択を迫られるエリート官僚。二人の人生が交差するとき、衝撃の事実が明らかになる!
現在進行形のさまざまな問題をダイレクトに射抜く、これまでの日本映画にない新たな社会派エンタテインメント!あなたは、この映画を、信じられるか──?
引用:『新聞記者』公式サイト
内閣情報調査室に巣食う人物が国政を私物化する今の政治、今の社会を描く映画。
この映画では、「正義」が勝つわけではなく、現実という「恐怖」を見ます。
たとえば、ニュースや情報が、「国」という「組織」が不利にならないように加工され、調整され、何重ものフィルターを通って届けられていることは、いま多くの市民が知るところ。
しかしながら、どう加工されるのか、どう調整されていくのか、、、そのやり方や場面を見ることなんてできないじゃないですか。
非常に理不尽な状況に立たされたときに、「あなたなら、どうしますか?」という問いを提示してくる映画です。
大きな組織のなかで、どう自分の人生を選択してゆくべきなのか。
「このままでいいんですか、私たち」、と。
『新聞記者』 公式サイト https://shimbunkisha.jp/
[kanren postid=”20440″]
スクール・オブ・ロック
バンドをクビにされ、ルームメイトのネッド(マイク・ホワイト)からも追い出されたデューイ(ジャック・ブラック)は名門小学校で代用教員をしているネッドになりすましバイト感覚で学校へ行くが……。
ミュージシャンでもあるジャック・ブラックが破天荒なロッカー教師を演じるコメディータッチの人間ドラマ。
名門小学校にそぐわないニセ教師と小学生たちがロックを通じて交流を深める、笑いと風刺、感動、そして涙ありの作品。監督に「オースティン映画協会」の設立者であり『恋人までの距離』のリチャード・リンクレイター。脚本は本作で友人役を演じるマイク・ホワイト。
実際に楽器を演奏している子役たちの演奏の巧さもにも注目だが、ジャック・ブラック演じるユニークなロックン・ロール教師からは目が離せない!
抑圧から解放されると、人はいきいきする!
本来、教育にあったらいいものすべてがある映画。
抑圧のフタが外れただけで、主体的に創造していく。学んでいく。
こどもたちのロックの演奏を止めさせようとライブ会場へやってきた大人たちも、ステージに立つこどもたちの可能性、開花したものを見て「禁止」がパッとはずれた。
逆にいえば、そうやって「結果」を見なければ「禁止」は外れないもの。最初に「こんなこと教えていきます」って言ったら絶対に反対する。
大人は評価に縛られていて、その結果がはっきりしないと「禁止」を外せない。
でもあの教育の中のこどもたちなら、外したまま育っていけるだろうな。
DVD、Blu-ray のほか、Amazon Prime Video や Netflix などでも配信中です!
ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス
世界中の図書館員の憧れの的である世界屈指の知の殿堂、ニューヨーク公共図書館の舞台裏を、フレデリック・ワイズマン監督が捉えたドキュメンタリー。
19世紀初頭の荘厳なボザール様式の建築物である本館と92の分館に6000万点のコレクションを誇るニューヨーク公共図書館は、地域住民や研究者たちへの徹底的なサービスでも知られている。
2016年にアカデミー名誉賞を受賞したドキュメンタリーの巨匠ワイズマンが監督・録音・編集・製作を手がけ、資料や活動に誇りと愛情をもって働く司書やボランティアの姿をはじめ、観光客が決して立ち入れない舞台裏の様子を記録。
同館が世界で最も有名である理由を示すことで、公共とは何か、そしてアメリカ社会を支える民主主義とは何かを浮かび上がらせていく。
リチャード・ドーキンス博士、エルビス・コステロ、パティ・スミスら著名人も多数登場。第74回ベネチア国際映画祭で国際批評家連盟賞を受賞。
かの有名なニューヨーク公共図書館を、あらゆる角度から取り上げていくドキュメンタリー。
大学生のとき、わたしは司書資格をとろうと一連の授業に参加していたけど(資格がほしいというより、図書館とその司書の存在に魅せられたから)、図書館の核である自由と中立性に触れるのが大好きだった。
このドキュメンタリーの中でも、「図書館は民主主義の柱」だと語られる。全米図書館協会もまた、「図書館は民主主義社会の礎石」だという。
その場所があることの希望と、心づよさと、いま自分たちがいる場所へのやりきれなさがある。
図書館職員のあらゆる仕事を紹介するほか、ゲストを招いて開催された多くのイベントも映されている。
そこには参加者の市民たちがいて、いち観客としての彼らの「人の話に耳をかたむける」という姿勢にハッとしたりした。相手の言ったことをしっかり体内へ取り込んで、観察する。耳に通すんじゃなく、きちんと言葉を読み込む。
『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』公式サイト http://moviola.jp/nypl/
関連書籍など
[amazonjs asin=”4004315778″ locale=”JP” title=”新・韓国現代史 (岩波新書)”]
[amazonjs asin=”4040821912″ locale=”JP” title=”新聞記者 (角川新書)”]
[amazonjs asin=”4004308372″ locale=”JP” title=”未来をつくる図書館―ニューヨークからの報告― (岩波新書)”]