「東京シューレにおける性暴力事件」および「奥地圭子理事長の辞任」の概要と多様な学びのこれから

こんにちは、AI-amのよっぴーまりんです。

日本を代表するフリースクール・NPO法人「東京シューレ」が、1998~2000年度に主催していた宿泊型フリースクール活動において、スタッフによる性暴力事件が発生していたことが、2016年提起の訴訟により明らかになりました(2019年7月に和解)。

これにより、NPO法人「東京シューレ」の創立者・奥地圭子さんが、2021年6月12日の総会にて、「東京シューレ」理事長および理事を辞任されました。

奥地圭子さんは、2020年7月12日に不登校新聞の代表理事を退任。2020年9月12日には、フリースクール全国ネットワークの代表理事および理事を退任されています。

 

出典:朝日新聞DIGITAL

東京シューレにおける性暴力事件について/新聞掲載文より

2016年7月6日

東京シューレの宿泊型フリースクール活動に参加した女性(当時10代)が、およそ1年間にわたり、男性スタッフから性暴力を受けていたことの初公判のニュースが信濃毎日新聞(の超片隅)に掲載されました。

 

 

2019年7月4日

信濃毎日新聞は、訴訟和解の記事も掲載しました。

 

2019年7月6日

朝日新聞デジタルも、“フリースクールでの性被害、和解「居場所の安全守って」” という見出しでニュースを掲載しました。朝日新聞デジタルでは「東京シューレ」の名前は伏せられています。

出典:朝日新聞DIGITAL

 

2020年2月3日

朝日新聞は再び、“フリースクールの子、性暴力から守れ 10代でスタッフによる被害、今も苦しむ30代女性” と題して、東京シューレにおける性暴力事件について記事にしました。

この第2報では「東京シューレ」の名を報じていますが、冒頭には掲載されていないため、朝日新聞デジタルでは有料会員としてログインしないとわかりません。

出典:朝日新聞DIGITAL

 

※ 全文は、こちらのサイト→ 勝山実@鳴かず飛ばず働かず が紙媒体の朝日新聞の画像を掲載されています。

 

2019年9月1日

東京新聞の「時代を読む」に、貴戸理恵さんの記事が掲載されました。

「フリースクール全国ネットワーク調査検証委員会中間報告」への疑惑

東京シューレにおける性暴力事件をわたしが知ったのは、2019年7月6日の朝日新聞デジタルの記事でした。

そして、奥地圭子理事長は事件を秘匿し、なかったことにしようとしていたことも知りました。

絶対にあってはならないことが、(他のフリースクールでも性暴力があったことを知っていたため)東京シューレでも起こっていたんだ、とショックを受けるとともに、やるせない感情が込みあげました。

 

2020年2月21日

「東京シューレ」元スタッフであり、「不登校新聞」元編集長でもある、現在NPO法人フォロ副代表理の山下耕平さんが、ご自身のブログ「迷子のままに」にて、事実関係の整理とご自身の考えを書かれています。→ https://maigopeople.blogspot.com/2020/02/blog-post.html

 

以下、同記事より、山下さんが整理された事実関係の一部を引用します。

2019年11月20日、東京シューレは「安心・安全な子どもの居場所・フリースクールづくりに向けて」という文書をホームページで公表し、人権委員会の設置や、性加害被害を含む人権侵害についてのスタッフ研修などに取り組んでいることを発表した。しかし、この文書においては、提訴された当該事件については、いっさい触れられていない。

 

東京シューレは、世田谷区が設置する「ほっとスクール希望丘」の運営を委託されている。当該事件を受けて、田中優子世田谷区議会議員に、世田谷区の施設での対策についての質問がTwitterで寄せられた。田中区議は担当課に確認し、東京シューレからは「スタッフは委託事業契約をしていた。その委託先とは、現在は関わっていない。今後、東京シューレとしては業務委託は行わない」などの事実を確認したこと、区としては東京シューレの「研修内容を確認し、人権委員会を設置、子どもたちからの通報や相談を受ける窓口を設置するなどが確認できたので了とする」との見解であることを、ブログで公表した。

 

2020年2月10日、東京シューレは、事実関係を認め、被害者への謝罪の意と、今後の再発防止策を表明する文書をホームページで公表した。ただし、「本件については、訴訟が和解によって終了したとの事実を除き守秘義務があることからご説明することができません」としており、事実関係について説明されているのは、「東京シューレが1999~2000年度に主催していた宿泊型フリースクール活動において、関係したスタッフによる性加害があったことが2016年提起の訴訟により明らかになり、2019年7月に和解に至りました」ということだけだった。

 

2021年5月18日

同じく山下耕平さんは、ブログにて “「フリースクール全国ネットワーク調査検証委員会中間報告」への疑問” も書かれています。→ https://maigopeople.blogspot.com/2021/05/blog-post_18.html

フリースクール全国ネットワーク調査検証委員会は、『フリースクール「東京シューレ」で過去に発生した人権侵害事件(以下「東京シューレ事件」という)の発覚を契機として、フリースクールの中間支援組織であるフリネットの責務としてフリースクールで発生する人権侵害事件に関する予防や対応に取り組んでいく』ものですフリースクール全国ネットワーク調査検証委員会中間報告より)

報告された「フリースクール全国ネットワーク調査検証委員会中間報告」の問題点、①委員会の構成について②事件の検証がすむ前に報告書をまとめていることを、報告からまもなく指摘されたのが山下耕平さんでした。

関係者が口を噤むなか、早くから問題意識を持って発信されてきたことが、下記、長田杏奈さんの記事にも書かれています。

 

2021年6月12日

ライターの長田杏奈さんが、原告さんや識者の方々に取材して書かれた記事 「【号外】「女子校のプールの水になりたい」弁護士に性暴力被害者が伝えたいこと」です。→ https://osadanna.theletter.jp/posts/6eec2950-cb77-11eb-9e0a-f9d12adace44

こちらの記事では、検証委員会の副委員長を務める安井飛鳥さん(Twitterアカウント名「DJ飛鳥@夢がここからはじまるよ」)のツイートに関する問題から、東京シューレが起こした性暴力事件を辿り、原告のAさん・不登校経験を持つ社会福祉士のBさんによる訴え・批判、上記山下耕平さんの指摘、検証委員会の問題など、詳しく書かれています。

以下、すべて同記事から引用しています。全文は記事をご覧ください。

 

DJ飛鳥は、2014年から2020年にかけて、30件以上「女子校のプールの水」「プールの水」ネタを投稿。「女子高生」「おっぱい」などのキーワードが含まれるつぶやきも繰り返していた。

(中略)

DJ飛鳥は、顔写真やプロフィールなどから社会福祉士資格を持つ弁護士である安井飛鳥氏のアカウントとして知られていた。一連の投稿に対して、内輪の冗談として軽く流せないのには理由がある。安井氏は、児童への悪質な性暴力事件を受けて設置された、フリースクール全国ネットワーク(以下、フリネット)による「子どもの人権擁護に関する調査検証委員会」の副委員長なのだ。

 

東京シューレの性暴力事件を機に、複雑性PTSDに悩まされている原告のAさんは、5月12日に安井氏の問題発言群に触れた際のことを「悪夢を見ているようで涙が出た」と振り返る。「まず、怖いと思いました。検証がどうなるか以前に、女子校に通う子どもを性的に搾取する冗談を言えてしまう感覚が恐ろしかった」と証言。一連の投稿には「子どもへの性加害は冗談にしていいものではないという感覚が欠如している」と指摘し、「Twitterは子どもたちも見ているわけですが、あの投稿が子どもの目に触れる可能性や、子どもの安全を脅かす冗談だということについて理解されているのでしょうか。当事者として、あの投稿を見たら弁護士に相談するのが怖くなる人もいるだろうなと感じます。また、こうした冗談が問題として扱われない空気は、東京シューレの性暴力が長く放置されていた体質と地続きなのです。こうした発言を冗談として放置することで、性暴力が起きやすく声を上げにくい社会の土壌を作っている自覚が無いことが問題だと感じています」と危惧を訴えた。

 

安井氏の「女子校のプールの水になりたい」投稿を巡る応酬が続く5月17日、フリネットは、調査検証委員会中間報告を発表。報告には「本中間報告を加盟団体メーリングリストで報告し、さらにフリネットホームページでも公開して、現在の検討内容や方向性についての意見を募る。寄せられた意見をもとに最終報告書を調製し、6月27日のフリネット総会に向けて6月13日開催のフリネット理事会に提出する」とあるが、本来ならば広く意見を問われるべきところ、団体メーリングリストとホームページのみでひっそりと公開する姿勢に、内輪で解決を図る体質が透けて見えるといえよう。

 

そもそも、「#女子校プールの水になりたい弁護士に抗議します」 以前から、フリネットの検証委員の正当性には疑問の声が上がっていた。部外者の目には、事件の端緒となった東京シューレと、フリネットは全くの別組織に見える。しかし、フリネットの事務所は東京シューレのビルの一角にあり、事件発覚後しばらく経った2020年09月12日までは東京シューレの代表である奥地圭子氏が理事長を務めていたという経緯もある。フリネットの単なるいち加盟団体とするには、東京シューレはあまりにも密接であり存在感が大きいのだ。

加害当事者である団体に近い組織としてより客観的な検証が要されるなか、5人の委員のうちの2人は、フリネット理事長の中村尊氏と同 理事の前北海氏というフリネット関係者で占められる。また、安井弁護士は前北氏と仕事を共にする間柄であることから、支援者が「第三者とは言えない立場なのでは」と問い合わせたところ、フリネットからは「プロだから問題ない」との回答があったという。さらに、検証委員会は、女児への性暴力をきっかけに設立されたにも関わらず、メンバーのうち女性は5人中1人。前出の末冨芳氏のみであり、ジェンダーバランス的に見てもいびつな印象を受ける。

「フリネットの対応に瑕疵が無かったかを検証するための委員に、代表理事や理事が入っているのは問題です。理事たちは本来”検証される側”であり、”検証する側”ではありません。例えば、いじめの加害者がいじめ検証の委員長や委員を務めるのがおかしいことは誰でもわかるはず。自分達の加害性に無自覚なまま、”公正な検証をするための条件を整えなくても問題ない “ともとれる形で検証を進めるのは、事件の矮小化であり二次加害です」(Aさん)。

 

※ フリースクール全国ネットワーク調査検証委員会中間報告はこちら→ https://freeschoolnetwork.jp/%e6%9c%aa%e5%88%86%e9%a1%9e/4024

 

東京シューレの報告「奥地圭子理事長の辞任について」と多様な学びのこれから

2021年6月24日、ログシューレ性暴力加害事件検証報告書を受け、東京シューレはホームページにて「奥地圭子理事長の辞任について」を掲載しました。

奥地圭子理事長の辞任について(ログシューレ性暴力加害事件検証報告書を受けて)
https://www.shure.or.jp/2021/06/24/news-26/

この文面を読むと、東京シューレのログハウスでの被害者は複数いたこと、同時に、加害者も複数いたことがわかり、あらためて愕然とします。
絶対にあってはいけないことが、絶対にあってはいけない場所で起こった。その責任は、ホームページに掲載されたこの文面だけで済まされるものでは決してありません(今後については、追って発信すると書かれています)。

奥地圭子理事長、中村国生理事・事務局長が辞められたあとの東京シューレがどのように生まれ変わっていくのか、安心できる要素はないけれど、だからこそ見ていきたいと思う。

 

奥地さんの権力は、誰が見ても明らかなものでした。シューレ小・中学校や「ほっとスクール」の設立、安倍前首相の視察を受け入れ、自民党政権下で教育機会確保法を成立。フリースクールやオルタナティブスクールなどの「多様な学びの場」を矮小化し、NPO法人東京シューレの利益を優先してきました。

「不登校」に関する活動で収益を得ることに異議はありませんが、それがフリースクール・オルタナティブスクールの土壌を痩せさせていくこと、なにより子どもたち本人の安心・安全、「多様な学びの場」を脅かすものとなれば、話はまったく別です。

 

また今回の事件は、被害者の方々はもちろん、日本にある他のフリースクール・一条校以外のすべての学び場に多大な迷惑をかけ、そこに通っている子どもたち本人や保護者の人たちに対しても不信感を抱かせるものです。

権力を着て歩く権力者のもとで、東京シューレの役員やスタッフの方々は、従順にならざるを得なかったことを想像します。
奥地さん・中村さんが辞任されたからといって、これからの東京シューレが信頼を取り戻していくというのは、本当に困難なことのはず。

それでも心ある人たちで、子どもたちのために、子どもたちの目を見れるように、新しいスタートを切ってほしいと思います。

 

[box class=”green_box” title=”「隠された声〜フリースクール性暴力事件」のイベントレポート” type=”simple”]

2020年2月29日には東京新宿にて、一般社団法人officeドーナツトーク主催のもと、田中俊英さん(officeドーナツトーク代表)と美濃屋裕子さん(ソーシャルワーカー)による「隠された声〜フリースクール性暴力事件」と題されたイベントが開催されました。

このイベントに参加された方のレポート記事『フリースクールで性暴力事件がなぜ起きたのか』がこちらで読むことができます。→ https://comriap.hatenablog.com/entry/2020/03/01/115527

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