『夢みる校長先生』公立学校のユニークな校長先生たち

ドキュメンタリー映画『夢みる校長先生』のお披露目上映会にご招待いただいて、先日拝見してきました。

『夢みる校長先生』は、2022年から劇場をはじめ各地での自主上映で公開されている、きのくに子どもの村学園のドキュメンタリー映画『夢みる小学校』のスピンオフ映画として制作されています。

公立校で通知表やチャイム、宿題をやめる

前作『夢みる小学校』では私立学校であるきのくに子どもの村学園がクローズアップされていましたが、今作『夢みる校長先生』は6校の公立小・中学校が取り上げられています。

きのくに子どもの村学園のカリキュラムや教育の実践は、私立学校だからできること……という声もあるなかで、『夢みる校長先生』では、公立校であっても通知表やチャイム、宿題といった慣習を取り除いてきた取り組みが紹介されています。

6人の校長先生

『夢みる校長先生』公式サイトでは、作中に登場する6人の校長先生と、元文部科学省事務次官の前川喜平さん、教育評論家の尾木直樹さん、ナレーターの小泉今日子さんらのコメントが掲載されています。
以下、敬称略でご紹介します。

福田弘彦(長野県伊那市立伊那小学校校長)

伊那市立伊那小学校は、学習資料要領を遵守した効率の小学校です。
この学校では、60年間通知表や時間割がない「総合学習」が続けられています。
伊那小学校には、こんな理念があります。
“子どもは、自ら求め、自ら決め、自ら動き出す力を、持っている”。
学校は「職場」ではなく、子どもと教師の「人生の邂逅の場」であってほしい、と願っています。

国分一哉(神奈川県茅ヶ崎市立香川小学校校長)

2020年度の学習指導要領の改訂をうけて 「子どものためになる評価方法」を 職員のみなさんと話し合いました。

私自身も以前から通知表の数字だけで 子ども同士が比べ合うことを無くしたいという気持ちがありました。
香川小学校では「通知表」という手段ではなく 保護者とともに子どもの成長を見守りたい、 と考えたのです。
その資任はすべて私がとると、伝えました。

競争が激しい社会にあって 「それは理想論」と言われる保護者の方もいます。
「理想を求めるのが学校ではないでしょうか。」 と私はお答えしています。

西郷孝彦(東京都世田谷区立桜ヶ丘中学校校長)

意味のない校則で押さえつけられると、論理的に考えられる子や、地頭のいい子ほどイライラするんです。
私は校則を3つだけに減らし、「定期テスト」を廃止しました。
私が考えるたった1つの校長ルール、 それは子どもたちが、学校で幸せな3年間を送ること
学校を、何の心配もない夢の中にいるような場所にできないか、と考えたんです。
公立学校も校長の裁量で大きく変えられるのです。

住田昌治(神奈川県横浜市立日枝小学校校長)

校長が機嫌が悪いのは「犯罪」です。
校長が上機嫌なら、先生たちも楽しく過ごせます。
先生が楽しいと、子どもたちが安心する。
安心した子どもの姿に、保護者の信頼が得られます。
学校経営で最も重要なスキルは、 “校長がいつも上機嫌である”ことなのです。

私は「異端」です。
人と違うことを喜んでいるからです。

私は「変態」です。
変化を楽しんで飛び回りたいのです。

育ち盛りの60代を謳歌する今日此頃であります。

原口真一(栃木県日光市立足尾中学校校長)

コロナで学校行事がつぎつぎと自粛されていきました。
私は感染症の文献を調べあげ、 医者、学識者に直接問い合わせしました。
「教育の質」を落とさず、 子どもたちを不安から守りたかったのです。

衛生管理マニュアルを守り過剰な付度さえしなければ学校内でマスクが不要な場面も多いのです。
コロナ禍の2020年、2021年、運動会、修学旅行などすべての行事を実施しました。
校長の私が責任をとる、と職員に伝えています。
感染者数は、ずっとゼロでした。

アクティブ・ラーニングとは「机上の学習」ではなく、現実のコロナ対応こそ「生きる力」、「最良のアクティブ・ラーニング」だったと思います。

宮崎倉太郎(東京都武蔵野市立境南小学校校長)

宿題が難しすぎて苦痛です、というお子さんがいます。宿題が簡単すぎて勘弁してください、というお子さんもいます。
毎日、同じ宿題を課すことが「平等」ではありません。

境南小学校の保護者のみなさんには、“宿題の点数は、通知表あゆみには反映されません”という学校案内を出した上で、校長裁量で「宿題を禁止」しました。
夏休みも宿題はありません。

帰宅後、宿題をする時間を使って紙飛行機が得意になったよ!というお子さんもいて時間にも気持ちにも余裕が生まれたのではないでしょうか。

前川喜平(元文部科学省事務次官)

子どもたちは 「子ども」として存在しているだけで価値があるのです。

教育現場では 「自由」が最も大切です。

その現場に「国家主義教育」や「新自由主義」が介入することをとても憂慮しています。

尾木直樹(教育評論家)

教育の主権者は子どもたちとその保護者です!

教育の主権を握っているのは、私たちなんですよね。

一人でも多くの方が、私たち市民の手で、 ”教育を再興”する行動に加わってくださることを願ってやみません。

小泉今日子

「民主主義って何なんだろう?」という日々が続いていますよね。
これは小さなところから少しづつ変えていくしかないかな、と感じていました。
例えば、家庭での教育を変えていく。 学校でそれができたらもっと最高なんだけれど、と思っていた”夢の世界”が「夢みる校長先生」にはありました。

この映画に登場する校長先生は、 それぞれとても素敵でした。
自分が、今、行動していることへの自信や愉しみを感じられる表情、話し方、そして声。
こうした大人の姿を目にすることが、子どもの安心に繋がるだろうな、と思います。
もし、時間を戻せるなら、生徒として全部の学校に行きたかったなぁ。

*いずれも『夢みる校長先生』公式サイト https://dreaming-teacher.jp/ より引用

公立学校だからこそ必要な考慮も

先日の初上映会には、200名以上の方がいらっしゃっていました。

当日は上映後にトークショーもあり、国分一哉元校長、西郷孝彦元校長、住田昌治元校長、原口真一元校長、宮崎倉太郎元校長、前川喜平さん、オオタヴィン監督らが登壇されました。

私立学校、はたまたオルタナティブスクールではなく公立の学校であるからこそ、いろんな問題や考慮すべき点があると思います。
新旧のルールや気風とこどもたちそれぞれとの相性、平均的な学力の確保、持続性の問題(実際に今作に出演されている校長の方々は定年を迎えられていることもあり)、および学校生活中に短期的に変化することによるこどもたちへの影響、「ファーストされる」ことでこどもたちが自主性を繕わなければいけなくなる場面、校長の業績に終始しないことなどなど……。

ただ、このような取り組みとその認知によって、「なくすことは不可能」「あるのが当たり前」だから「ある」んだという考えをいったん傍に置くことができるのは大切ですし、そこからよりよい公教育のありかた・やりかたを考えていく材料になると思います。

きのくに子どもの村学園を取材した前作『夢みる小学校』を拝見したときの記事はこちらです

『夢みる校長先生』上映情報

『夢みる校長先生』公式サイトでは、予告編の映像が公開されています。

夏休みごろに劇場公開、その前にはオンラインでの上映会も予定されているとのこと。
情報が公開され次第、こちらに追記いたします。

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