こんにちは、
AI-am(アイアム)の
星山まりん です。
親は子どもを愛しているし、親のやることは、子どものためを思ってのことばかりです。
とはいえ子どもは、親の思った姿になってくれるわけじゃないし、反抗もするし、暴言も吐くかもしれないし、「親不孝」な子どもに見えるかもしれません。
子どもはもちろんひとりの人間ですが、それでも親の力は絶大です。
そして親の与えるものと子どもの求めるものには、大きなずれがあることが、ほとんど。
ここに挙げた映画は
- 青い春
- 人間の証明
- ケンとカズ
- 青春の殺人者
と、極端なものばかりですが(だいたい殺人が起こる……)、案外とても、現実的です。
日ごろ、自分を客観的にみることは難しいけど、映画をとおして自分を発見するのもひとつの良い方法。
そして大切にしていたいものを見つけられる機会だなと、思います。
もくじ
青い春
「しあわせなら手をたたこう」と壁面に落書きされた朝日高等学校の最屋上。最も空に近いこの場所でベランダゲームに興じる九條たち。
失敗すれば校庭へまっさかさまの死のゲームだが、九條にとってはどうでもいいことだった。
無感情な日常。退屈な日々。淀んだ教室の空気。苛立ち。
そんな彼らにも進学、就職…突きつけられる現実の中で決断の瞬間がやってくる。「九條、俺も連れていってくれよ、なっ」
出典:DVDパッケージ裏
「自分が欲しいものを知ってるやつは、怖いです」
2002年、原作・松本大洋、監督・豊田利晃、主演・松田龍平。
青春における暴力や流れる血にはかならず、なんであれ「起こる理由」と「その後」があって、個人の内面と外部との不調和がある。
この映画に、いわゆる「不良映画っぽい」、直接的な描写は少ない。行為そのものではなく、大人が見落としがちな個人へと視点が移っていく。
学校という(ある意味では天国の、ある意味では地獄の)檻のなかで、無気力なりに、退屈なりに、日常がすれすれに保たれている。
そして主要人物のひとりの雪男(高岡蒼佑)が同級生を刺し殺したことが波紋となって、閉塞的な青春の、それぞれの出口の痛切さを見る。
映画には大人がほとんど登場しないけれども、彼らの世界から除外されない大人がふたりだけいる。
ひとりは教師の花田先生(マメ山田)、ひとりは購買部のおばちゃん(小泉今日子)。
いちばんイノセントな彼らの世界のなかでちゃんと存在できる大人って、こういうことだ。
わたしはひとを殴ったことさえないけれども、同級生を殺す彼の側、つまり、軽薄で、縦社会に媚びへつらい、上に立ったような気になっている同級生を刺し殺す側の人間でありたいと思う。
原作は松本大洋の短編集、『青い春』。
人間の証明
“キスミーに行くんだ”
ハーレムを飛びだした黒人青年ジョニーは、東京のホテルの42階直行エレベーターの中で鮮血に染まってしまう。“西条八十詩集”と“ストウハ…”という最後の言葉を残して。その頃、42階では女流デザイナーの八杉恭子のファッションショーが催されていた。
棟居刑事らはニューヨーク市警と共に事件を捜査する。キスミーとは?ストウハ…とは?ジョニーは母に会うため日本へ来たのでは…?
推理はめぐり、捜査が進むにつれて浮びあがる八杉恭子の影。
新しい事実が掘り起こされ、また意外な事件が生まれてゆく。
父と子、母と子、男と女の愛が見えない意図に絡みあい、そして感動のラストシーンが―。出典:角川
「しかし甘いでしょう。僕は甘いと思うな」「甘くてどうしていけないんだ」
1977年、原作・森村誠一、監督・佐藤純彌、主演・松田優作、岡田茉莉子。
初期の角川映画作品で、映画としての欠点はいくらでもあるけれども、母と子の関係、人間の愛を観ようということで。
ひとりの母親とふたりの子どものあいだに、まったく異なる関係が築かれている。
遠いニューヨーク・ハーレムで、日本にいる母親との幼少期の愛と思い出を守りながら健やかに生きる子どもと、
おなじ家で裕福に暮らし溺愛されていても、ついぞ自分を理解しない母親にうんざりしている、「いくじなし」の子ども。
母親は、結局ふたりともを殺してしまう(ひとりは直接的に、ひとりは間接的に)。
いつだったかこの映画の話になったとき、よっぴーが言っていたのは、「実際に命を奪うわけじゃなくても、大勢の親が子どもを殺している」ということだった。
「母さん、僕のあの帽子どうしたでせうね」からはじまる西條八十の詩(「ぼくの帽子」)が物語をめぐっていく。
あの詩は甘いでしょう、と話す連れ(佐藤蛾次郎)に大滝秀治は、「甘くてどうしていけないんだ。人間、なんてったってかんてったって、結局行き着く先は優しさだよ」と言う。
2012年には、Blu-ray も出ている。Amazonのprime videoでも観られます(2018年7月現在)。
ケンとカズ
悪友であるケンとカズは自動車修理工場を隠れみのに覚せい剤の密売で金を稼いでいたが、ケンは恋人が妊娠したこと、カズは認知症である母親を施設に入れるため金を必要なことを言い出せずにいた。
2人は密売ルートを増やすために敵対グループと手を組むが、元締めのヤクザに目をつけられ、次第に追いつめられていく。
出典:映画.com
「殺す殺す言って、全然殺せねえじゃねえかよ」
2016年、監督・小路紘史、主演・カトウシンスケ、毎熊克哉。
目的ではなく手段としての暴力、あるいは環境によって、限られた手段しか持ち合わせられなかった人間たちを映したものが好きだ。
バイオレンス映画、チンピラ映画、犯罪映画、そういう面が目立つけれども、もっと人間の中心に根づいているものを見られる。
リスクとまったく釣り合わない安い賃金で業務を続けるケン(カトウシンスケ)とカズ(毎熊克哉)の日々を揺るがし、この「現在」に腰を落ち着けていられなくさせるだけの引力が、「家族」というものにはある。
家族は、ふたつある。
自分がつくる家族と、自分をつくった家族。
どちらにも、愛情が脈々と流れている。
これからの家族のために全部をやめて、住む街を変えようとするのも、
自分を虐待した母親を何度殺してやろうとしても殺せずに、施設へ入れるために金を工面しようとするのも、
散々な環境下にいてなお愛情を、親や子のつながりを諦められない人間のやることだ。
ラストシーンで、彼は母親に対して「お前のせいで」と、やっと口にする。
やさしい子どもに巻きついた鎖をとくほど大変なことはないし、それよりももっと早くにできる唯一のことは、親のもっている鎖というやつを、親が捨て去るってことだと思う。
青春の殺人者
実際の事件をもとに描かれた中上健次の短編小説を映画化した長谷川和彦の監督デビュー作。
不確かな理由で両親を殺害してしまった青年の破滅への道を冷徹なまなざしで描いた衝撃作。厳格な両親のもと、溺愛されて育った22歳の青年、斉木順。親に与えられたスナックの経営を始めるが、ある日、両親にスナックで手伝いをしている幼なじみのケイ子と別れるよう迫られる。
口論の末、父親を殺してしまい、さらには行き違いから母親までも刺し殺してしまう……。出典:allcinema
「だけど俺、なんにもないことが寂しかったから、つい俺」
1976年、原作・中上健次、監督・長谷川和彦、主演・水谷豊。
主人公の斉木順(水谷豊)は、親殺しをする。
以前書いたような、精神的な親殺しじゃなく、両親ふたりともを刺し殺してしまう。
ここに挙げた4作のなかではこの映画が最も強烈で、けれど最も核心的だと思う。
現実を増幅させるとき、あるいは現実に少しの環境ときっかけがあるとき、こういうことは実際に起こるよな、という説得力に長けている。
店も、車も、女も大学も、自分の気まぐれに与えては取り上げる父親と、すべてを指図して、自分の意思に子どもを取りこむ母親。
どちらも常軌を逸しているように見えて、これって現実のあちこちの家庭で日夜くりかえされている。
子どもの自立を阻むのは、いつでも親だ。
干渉が、優位さの誇示が、子どもの自己を奪いとる。
それでも自分を見失えない、抗うだけのエネルギーをなくせない子どもは、親を殺さないとその向こうへ行くことができない。
これも、ニューマスターのBlu-ray が2016年に出ている。
(大量の血や死体が映るので、苦手な方はお気をつけください。)
ちなみに監督の長谷川和彦は、この作品の次に、『 太陽を盗んだ男 』(沢田研二主演)を撮っている。
思春期というくくりからは外れるけれども、「若者」というくくりでは、現代の若者にも共通する空虚さだと思う。
その空虚さって、子ども時代につくられるものだ。
番外編:家族ゲーム
息子の高校受験のためにと雇った風変わりな家庭教師がやって来たことで一家に巻き起こる騒動を描いた傑作ホーム・コメディ。
「の・ようなもの」の森田芳光監督が、現代家庭の抱える問題をシュールなタッチでユーモラスに描く。横一列に並んでの食事シーンなど斬新な表現手法が話題を呼んだ。
出来のいい兄とは反対に、問題児の中学3年の弟・沼田茂之。高校受験を控えて、家庭教師としてやって来たのは三流大学の7年生でなぜか植物図鑑を持ち歩く吉本勝という奇妙な男だった……。出典:allcinema
「俺があんまり深入りするとバット殺人が起こるんだよ」
『家族ゲーム』については、以前このブログで記事を書いています。
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親殺しも子殺しもない、反抗や修復のエネルギーさえない家族。
この当時の1983年とは比べものにならないほど、さらに力をなくしている平成の終わりにこそ、わたしたちは人間とか家族っていうものに戻っていくときなんじゃないかなあと、思ったりする。
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