教育専門誌『FQ Kids』2023年秋号にて、オルタナティブ教育が特集されています。
掲載内容の簡単な紹介と、本誌で解説されている「オルタナティブ教育」についてのわたしたちの雑感も最後にまとめました。
オルタナティブ教育、日本でも
『FQ Kids』は、幼児・小学生年齢のこどもの「非認知能力」や「生きる力」を育む、ウェルビーイング教育の情報に富んだ教育専門誌です。
2023年秋号では、海外のものと思われがちなオルタナティブ教育が日本でも選べる*というテーマで、いま日本にあるオルタナティブスクールが紹介されています。
日本にもある、海外発のオルタナティブ教育(オルタナティブスクール)として紹介されているのは、以下のとおり。
- モンテッソーリ教育
- シュタイナー教育
- レッジョ・エミリア・アプローチ
- フレネ教育
- サマーヒルスクール
- イエナプラン教育
- 森のようちえん
- サドベリースクール・デモクラティックスクール
それぞれの教育の特徴やキーワード、日本での所在地や実施施設などが、実際のこどもたちのようすを併せて詳しく紹介されています。
とくにモンテッソーリ教育、シュタイナー教育に関しては詳しく特集されており、家庭での実践方法なども紹介されています。
また、上記の海外発の教育・スクールだけではなく、日本で独自にはじまったオルタナティブ教育の場も紹介されています。
「非認知能力を伸ばす」教育としての紹介ではありますが、日本におけるオルタナティブ教育・オルタナティブスクールをざっくりと知るにも、実際に選択肢として考える際の概要としても、取っかかりに役立つ一冊となっています。
* 現状、日本のオルタナティブスクールの多くは無認可校であり、「選べる」という表現は適切でない側面もあります。
オルタナティブ教育は「個に寄り添う」教育なのだろうか?
本誌では、はじめにオルタナティブ教育の特徴が解説されています。
もちろん、わかりやすく客観的にまとめられているのですが、「1人ひとりの個に寄り添う」ものとしてオルタナティブ教育が紹介されている点は、難しい問題だなと感じました。
わたしたちの体感と考えでは、オルタナティブ教育は「個に寄り添う」ものではありません。
ガチガチの画一教育と比較するなら、たしかに個を尊重する傾向があるように見えますが、オルタナティブ教育=個に寄り添う、といえるわけではないと思います。
一人ひとり、一つひとつの個に寄り添うことを重視するのはどちらかというとフリースクールにみられる特徴だと思います。
フリースクールとオルタナティブスクールの違い……は長くなるのでここでは割愛しますが、現在のフリースクールは、「一条校の教育とは別の教育を求めている人」ではなく、「軸は一条校や公教育に置いているけれど(なんらかの理由で)そこに通えない人」の居場所として扱われていることが多い印象です(実際に名称によって活動内容や方針がきっちり定められているわけではないので、グラデーションや例外は多々ありますが)。
オルタナティブ教育、オルタナティブスクールは「一条校の教育とは別の教育」であって、それを求める人との間で成立しているわけですが、「教育」の場ではないフリースクールに対して、ひとつの「教育」の場であるオルタナティブスクールは、本質的には「個に寄り添う」場所にはなりようがありません。
本誌で特集されているモンテッソーリ教育やシュタイナー教育などを見るとわかりやすいと思います(もちろん、モンテッソーリ教育やシュタイナー教育以外のオルタナティブ教育も同様です)。
当然、それぞれの教育に「こうあるべき」とされるこども/人間像があり、その実現の手段となるのが「教育」なんですよね。
とはいえ先に書いたように、いわゆる一条校、公教育を基準にすれば、個に寄り添っているように見えるし感じられる、というのも確かです。
でも、どんなオルタナティブ教育も、あくまでその教育が合うこどもたちにとっては個が押し潰されずにすむということであって、一人ひとりのこどもたちに合わせて教育が変化するわけではないという点には、注意が必要だと思いました。