こんにちは、
AI-am(アイアム)のよっぴーまりんです。
日本でオルタナティブ教育を実践している学校のひとつ、「サドベリースクール/デモクラティックスクール」をご存知ですか?
今回は、全国のサドベリースクール/デモクラティックスクールが一丸となって編著された書籍『 自分を生きる学校 -いま芽吹く日本のデモクラティック・スクール 』とともに、
アメリカ・ボストンの「サドベリーバレー・スクール」の精神・理念から学んだ、日本の「サドベリースクール」「デモクラティックスクール」をご紹介します。
もくじ
「サドベリースクール」「デモクラティックスクール」の概要
「サドベリースクール」「デモクラティックスクール」は、アメリカ・ボストンにある「サドベリーバレー・スクール」の精神・理念を引き継いだスクールです。
オルタナティブスクール(一条校とは異なる、独自の理念・方針にもとづいた教育を行う学校)のひとつであり、日本では、1997年に創立された「デモクラティックスクール まっくろくろすけ」がその先駆けとなりました。
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現在、日本では、
「サドベリーバレー・スクールをモデルとした学校」を意味する「サドベリースクール」と、
「民主主義の学校」を意味する「デモクラティックスクール」の2つに名称が分かれています。
どちらの名称を用いるかは各スクールの考えによって異なっていますが、両者は同じ理念・方針をもつ学校です。
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出版当時、日本でのサドベリースクール/デモクラティックスクールの草分けだった3校の子ども、スタッフ、保護者、それぞれの視点をまじえて綴られた書籍『 自分を生きる学校 -いま芽吹く日本のデモクラティック・スクール 』とともに、
サドベリースクール/デモクラティックスクールが実践している教育についてご紹介します。
サドベリースクール/デモクラティックスクールとは?
ここに、「時間割なし」「テストなし」「子ども達による学校運営」を行っている学校「デモクラティック・スクール」を紹介します。
既存の学校システムと比べると、一風変わった学校という印象を受けますが、現在の21世紀においては、とても自然で、とても理に適った、子ども達にとって「最高の学校」と言えます。
引用:『自分を生きる学校 -いま芽吹く日本のデモクラティック・スクール』p.4
多くのオルタナティブスクール同様、サドベリースクール/デモクラティックスクールには、テストや宿題はありません。また、カリキュラムもありません。形式を問わず、大人から子どもへの「評価」のない学校です。
『自分を生きる学校 -いま芽吹く日本のデモクラティック・スクール』では、日本のサドベリースクール/デモクラティックスクールのモデルとなった、アメリカ・ボストンのサドベリーバレー・スクールの教育について、以下のように説明されています。
その学校の特徴は、当時のアメリカでも驚くものでした。カリキュラム・学年・テスト・成績・一斉授業・職員室・校長といったものは一切ありません。なぜなら子どもの成長にとってそんなものは必要なかったからです。そして、学校運営(規則作り)、教師の雇用計画(人事権)、学校の予算、そのほか必要なことすべてを、子ども達が一票を投じて決めていくシステムを採用しました。
まさに、デモクラティックのゆえんです。
その後、サドベリーバレー・スクールは学校の誰もが平等な一票をもつ「民主主義の学校」という意味から「デモクラティック・スクール」と呼ばれるようになりました。引用:『自分を生きる学校 -いま芽吹く日本のデモクラティック・スクール』p.4-5
サドベリースクール/デモクラティックスクールの教育方針
● 自分の好きなことを学ぶ
子どもたちは自分で学び、成長することができると信頼されています。だからそれぞれが興味のあることをしています。
子どもたちは「やりたいことをやる」ことで、その時々の最大限の学びを得ています。
● カリキュラム&テストなし
どんな形でも子どもたちがテストなどで評価されたり、大人からアクティビティについて先に提案されたりすることはありません。
子どもたちは自分で自分のことを考えることができるからです。
● 子どもの尊重
子どもたちは大人から一方的に指示されたり、規制されたりすることはありません。
子どもも大人も同じように一人の人間として大事にされています。
● ミーティングで話し合って決める
スクール全体にかかわることはミーティングで話し合います。みんなで決めて納得したルールは守りながら、自由にすごすことができます。
スクールの方針・予算・スケジュール・人事なども子ども・スタッフ共に1 票をもって決定します。
スタッフをだれにするか子どもたちが投票をするスクールもあります。
● 年齢ミックス
学年・クラス分けはありません。いろんな年の子ども達がいっしょに過ごす中で、たがいに教えあったり影響を受けたりしながら、多くのことを学んでいっています。
引用:デモクラティックスクール総合情報サイト
http://democratic-school.net/index.php/%E6%95%99%E8%82%B2%E7%90%86%E5%BF%B5/
サドベリースクール/デモクラティックスクールの学び、学ぶこと、学びかた
シュタイナー学校、サマーヒル・スクール、フレネ教育、イエナ・プラン……。さまざまなオルタナティブ教育を実践する学校がありますが、中でもサドベリースクール/デモクラティックスクールは、とりわけ「枠」のない教育といえます。
「子どもは好奇心と向上心を生まれもち、自ら学んでいくことができる」
「大人が強制せずとも、子どもはなりたい自分になるために自分に必要なものを学んでいく」
(引用:『自分を生きる学校 -いま芽吹く日本のデモクラティック・スクール』p.5)
という考えに基づいて、子どもたち自身は日々「やりたいことをやる」を通して、それぞれに学びます。
サドベリースクール/デモクラティックスクールの
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- カリキュラムなし
- テストなし
- 年齢ミックス
- ミーティング(話し合い)による運営
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などの特徴について、『自分を生きる学校 -いま芽吹く日本のデモクラティック・スクール』からご紹介します。
カリキュラムなし。「遊んでいる“だけ”」の中にあるもの
サドベリースクール/デモクラティックスクールには、カリキュラムがありません。「学校で何をするのか」をはじめ、登校時間、食事の内容や時間などなど、子どもたちが自分自身で決めていきます。
デモクラティックスクール総合情報サイトでも、子どもたちがそれぞれに「好きなことをしている」ことへの懸念や疑問が寄せられていることがわかります(→ デモクラティックスクール総合情報サイト > よくある質問 http://democratic-school.net/index.php/81/)。
『自分を生きる学校 -いま芽吹く日本のデモクラティック・スクール』では、カリキュラムのない中で「好きなことをしている」子どもたちが身につけている力について、こう書かれています。
自分のしたいことをしたらいい、それはすごく簡単で誰にでもわかりやすい。ここでの生活は、一見「遊んでいるだけ」に見えます。一見ではなくて本当に遊んでいます。そんな、遊んでいる“だけ”の中に何があるのでしょう。
興味のあることには常に真剣で一生懸命取り組んでいます。ものすごく熱中して一日中一つのことをしている子もいます。その間に「持続力」と「集中力」がついていきます。反対に、次から次へといろんなことをしていく子もいます。ここでは「好奇心」や「情熱」を潰されることはありません。
(中略)
しかし、いつでも好きなようにできるわけではありません。何か約束がある時は、それを守って行動しています。話しあいで自分もOKして、決まったことだからです。(中略)皆で決めたことは守り、たいへんな時は皆に相談して、皆でまた決めていくのです。「責任」という言葉をわざわざ使わなくても、それぞれが日々の体験を通じてそれを考えていっています。
引用:『自分を生きる学校 -いま芽吹く日本のデモクラティック・スクール』p.70-71
こうした「遊び」とその過程(「自分のことは自分で判断・選択し、実行・実現していく」)ことは、「人生そのもの」だと書籍では書かれています。
あらかじめ設けられた授業クラスやクラブなどはありませんが、子どもたちの希望・働きかけによって、クラブや授業が誕生することもあります。
その場合にも、スタッフ(大人)が先んじて提供するのではなく、子どもたち自らがスクールのスタッフに依頼したり、外部から講師を招いたりする といったことが書かれています。
テストなし。基礎学習、学力について
国語・数学・理科・社会……といった科目勉強がないサドベリースクール/デモクラティックスクール。
基礎学習についても、「自分の興味から学ぶ」という視点で考えられています。
赤ちゃんが自分の力で言葉を覚えるように、子ども達は自分で読み書き計算を覚えていきます。自分の好きなことをするのに必要だからです。誰もが文字を覚え、計算できるようになっていきます。思いのままに遊ぶのに、より自分の世界を広げていくのにいることだからです。もちろんそれぞれ身につける年齢はちがいます。一人ひとりやりたいことが異なるので、必要に駆られる時期がちがうからです。
(中略)
本来物事はつながっていて、一つひとつ科目になんかわかれていません。ただ、何十人もの生徒に一斉に同じことを教えるために便宜上教科に、そして単元に分けているのではないでしょうか。
デモクラティックスクールの日常の中にはいちいち科目に分けなくても学びがいっぱいです。たとえば、「話の要点をおさえる」という国語の勉強は、ミーティングではいつもしていることで、自然に取り組んでいる。「話をわかりやすく、順序だてて組み立てる」というのも相手に自分の意見を理解してもらうのに不可欠なことです。
引用:『自分を生きる学校 -いま芽吹く日本のデモクラティック・スクール』p.80-81
また、子どもたちが年齢を重ねて、専門的な勉強に取り組む場合にも、それまでに「好きなことに熱中する中で自分のものにした「集中力・持続力・工夫する力・楽しむ力・達成感」など」(引用:『自分を生きる学校 -いま芽吹く日本のデモクラティック・スクール』p.81-82)が、とても役立つといいます。
それまで科目別の勉強をしていなかった子でも自分がすると決めた瞬間から既存の学校で何年もかけてやる範囲を短い期間でマスターしていきます。知識の暗記としての基礎学力ではなく、真に学ぶ力を身につけているからです。
引用:『自分を生きる学校 -いま芽吹く日本のデモクラティック・スクール』p.81
「お互い学びあう」異年齢ミックス
サドベリースクール/デモクラティックスクールには、クラスがありません。
実社会と同様に、さまざまな年齢の子どもたちが一緒になって学校生活を送ることで、「知らなかった考えを知る」「考えたこともなかったようなことを考える」といったことが、自然と起こっていくといいます。
子ども達は多くの時間を年齢に関係なく話したい人と興味のある話題についてしゃべっています。コミュニケーションを通して、他人と関係を作り、他人の考えや感じ方を知り、自分の中に取り入れ、自分の世界を広げていきます。やり取りの中から、突然「ひらめく」こともあります。
(中略)
その「ひらめき」から自分自身の意識が広がり、いろんなことを学び、無限の可能性を自分に感じます。子ども達はその可能性に対する興奮と情熱を持続しながら成長していきます。それは向上心・自尊心を失わないまま大人になっていくということでもあります。これが、異年齢の集団の中ではごくごく自然なこととして毎日繰り返されています。
引用:『自分を生きる学校 -いま芽吹く日本のデモクラティック・スクール』p.75
「基本的人権が尊重されたスクールを作りあげている」ミーティング(話し合い)による運営
サドベリースクール/デモクラティックスクールでは、日々、民主的なミーティング(話し合い)が行われます。
国の民主主義との違いは、直接民主主義が成り立っていることだといいます。
そのため議題は、ルール(校則)づくり、もめごとの解決から、人事・予算、スクールの方針……などなど多岐にわたり、それらを子ども・スタッフ全員で話し合って決めていきます(スクールの基盤になる事柄については保護者も参加して決定されます)。
誰もが平等な一票を持ち、多数決で決めるのは確かに一つのやり方です。しかし、ほかにもさまざまな民主的な決め方があるのです。みんなが気に入る案がでるまでどんどん案を出し、とことん話しあうこともできます。いやな人がいる案を消していき、誰もがいやでない案にするということもできます。最初からこれで決めるということがあるのではなく、みんなで方法も選び決めていくのです。
また決まったことでも、実際にやってみて気に入らなければ、ミーティングに再び議題として出し変えていくための話しあいがもてます。
(中略)
いやならいやと言える。納得いかないならいかないと言えることが大事であり重要であり、デモクラティックであることの基礎・基本なのです。
このようにして、子ども達とスタッフによる自治を通じて一人ひとりの基本的人権が尊重されたスクールを作りあげているのです。
引用:『自分を生きる学校 -いま芽吹く日本のデモクラティック・スクール』p.84-85
本では、実際に各スクールで行われた、以下のようなさまざまなミーティングの、
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- 敵が血を流して死んでいくテレビゲームをプレイしている子と、そうしたグロテスクなシーンを見たくない子がいるので、どう解決するか?
- 外部から招いている先生に対して、迷惑をかけた子どもへの対処
- ミーティングそのものの見直し
- 総会(子ども、スタッフ、保護者が全員で話し合うミーティング)に出席しない子どもがいることへの改善策
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議題の発生から、話し合いの過程、決定までが、一部紹介されています。
子ども、スタッフ、保護者の声
子ども、スタッフ、保護者によって作られているサドベリースクール/デモクラティックスクール。
この『自分を生きる学校 -いま芽吹く日本のデモクラティック・スクール』上でも、それぞれの立場から、スクールをどのように見ているのか? を知ることができます。
各スクールのスタッフによる教育観はもちろん、
「保護者座談会」では、
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- どのようにサドベリースクール/デモクラティックスクールに出会ったか?
- 一条校やご近所との付き合い
- サドベリースクール/デモクラティックスクールで育っている子どもから感じること
- 家族、親子の関係の変化
- 「義務教育」や基本教育法について
- 卒業後の子どもたちの様子
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などなどの話題について、保護者の方々の考え・経験を知ることができます。
また、子どもたちへのインタビューやアンケートなども掲載されていて、
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- どのようにサドベリースクール/デモクラティックスクールに出会ったか?
- なぜスクールに通っているのか?
- いつもどんなことをしているか?
- スクールでの楽しいこと、嫌なこと
- これからしたいこと
- サドベリースクール/デモクラティックスクールで学んだこと、身につけたこと
- 卒業後、サドベリースクール/デモクラティックスクールに思うこと
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など、子どもたちの考え、体験を知ることができ、サドベリースクール/デモクラティックスクールを多面的に理解できる一冊です。
また、「デモクラティックスクール まっくろくろすけ」を創立された黒田喜美さんは、サドベリースクール/デモクラティックスクールを作ることに興味がある人に向けても、このように書かれています。
デモクラティックスクールをはじめるのに必要なことはただ一つ。「民主的に生きる」ということを大切に考え続けることです。
引用:『自分を生きる学校 -いま芽吹く日本のデモクラティック・スクール』p.184
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[box class=”green_box” title=”サドベリースクール/デモクラティックスクール” type=”simple”]
全国各地のサドベリースクール、デモクラティックスクールの情報をこちらにまとめています ↓↓
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多様な学び 〜教育はもっと多様であっていい〜
オルタナティブスクールに興味のある方はもちろん、公の学校が合わない人、満足していない人……。そんな方たちにはぜひさまざまな選択肢を知っていてほしいし、
自分は公の学校が合っているし満足しているという方もまた、多様な学びを知っていくことで、これらの教育を選びたい人たちが選びやすい世の中をつくっていくことができると思います。
子どもたちが自分に合う学び場で育っていけることが、わたしたちの望みです。
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